ファクトチェックのガイドライン(暫定版)
FIJは、国際ファクトチェックネットワーク(International Fact-Checking Network, IFCN)のファクトチェッカー行動規範(2016) =透明性・公開性の原則= を踏まえたファクトチェック活動を推進し、支援していきます。そこで、以下のとおり、2種類のガイドラインを策定しました。
本来は、各界関係者とも協議を重ねて策定すべきものですが、総選挙ファクトチェックプロジェクトに間に合わせるため、急きょFIJ発起人メンバーを中心とした委員会で議論を重ねて作成しました。したがって、あくまで暫定版となりますが、参考までに公表いたします。今後、総選挙プロジェクトでの成果・課題や関係者との協議を行い、パブリックコメントも行って正式版の策定を目指す予定です。[2017/10/10記]
ファクトチェッカーの運営方針ガイドライン(暫定版)
(趣旨)
本ガイドラインは、ファクトチェック記事を作成、発表する前にウェブサイト等で公開しておくべき基本的事項を定めるものとします。ファクトチェック・イニシアティブは、本ガイドラインに基づいてファクトチェックの実施者が適切な情報開示を行っているかどうかを評価をするものとします。
(ガイドラインの内容)
ファクトチェッカーは、以下の事項について、自ら運営するウェブサイト等で読者が容易に理解できるように公表したうえで、ファクトチェック記事を作成、公表するよう、努めるものとします。
(1) 目的・対象範囲に関する事項
何のために、どのようなカテゴリーの言説をチェックするのかを説明すること。
(2) 方法論に関する事項
対象言説の選択基準、判定〔レーティング〕の基準などを説明すること。
(3) 組織運営に関する事項
財源、構成員、連絡先などを説明すること。
ファクトチェッカーの記事作成ガイドライン(暫定版)
(趣旨)
本ガイドラインは、ファクトチェック記事を作成、発表するにあたって、準拠すべき基本的事項を定めるものとします。ファクトチェック・イニシアティブは、本ガイドラインに基づいてファクトチェック記事を評価するものとします。
(ガイドラインの内容)
ファクトチェッカーは、以下の要件を満たすように、ファクトチェック記事を作成し、発表するよう、努めるものとします。
(1) 対象言説の特定
対象言説を特定しやすい形で(誰の、いつの、どこでの、どんな内容の言説か)記載すること。
(2) 認定事実と結論の明示
どのような事実を認定し、どのような結論または判定(レーティング)をしたかを、読者が理解できるように記載すること。その際、事実認定と解釈・解説を混同しないように、表現上区別して記載すること。
(3) 判断根拠と情報源の明示
事実認定や結論を導いたときの、判断の理由・根拠、証拠(エビデンス)、情報源(ソース)を明示すること。
(4) わかりやすく、誤解を与えない見出し
ファクトチェックの対象言説もしくは結論について、誤解を与えないように注意しつつ、読者が容易に理解できるような見出しを付けること。
(5) 記事の公開日・作成者、訂正情報の開示
ファクトチェック記事の公開日、作成者を明記すること。訂正したときは、その日や変更内容などを読者が容易に理解できるように記載すること。
(ガイドライン委員会・起草メンバー)
委 員 奥村 信幸(武蔵大学社会学部教授)
委 員 金井 啓子(近畿大学総合社会学部教授)
委 員 John Middleton(一橋大学大学院法学研究科教授)
委 員 瀬川 至朗(早稲田大学政治経済学術院教授)
委 員 立岩 陽一郎 (認定NPO法人アイ・アジア「ニュースのタネ」編集長)
委 員 藤村 厚夫(スマートニュース株式会社執行役員)
委 員 牧野 洋(ジャーナリスト兼翻訳家)
委 員 楊井 人文(一般社団法人日本報道検証機構代表)
委 員 山﨑 毅(NPO法人 食の安全と安 心を科学する会(SFSS)理事長)
(FIJが策定したガイドラインの内容は、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の行動規範5原則を踏まえて、それを具体化したものです。ファクトチェックを行うにあたっては、以下の行動規範もご確認ください。)
IFCNファクトチェック行動規範(試訳)
(International Fact-Checking Network fact-checkers’ code of principles)
This code of principles is for organizations that regularly publish nonpartisan reports on the accuracy of statements by public figures, major institutions, and other widely circulated claims of interest to society. It is the result of consultations among fact-checkers from around the world and offers conscientious practitioners principles to aspire to in their everyday work.
この行動規範は、公的な人物や主要な機関による言説や、広範に流通している社会の利害に関する言説の正確性について、非党派的な記事を恒常的に発表している組織のためのものです。これは、世界中のファクトチェッカーが協議した結果であり、日々の活動における原則を誠実な(ファクトチェックの)実践者に提供するものです。
(1) A COMMITMENT TO NONPARTISANSHIP AND FAIRNESS(非党派性と公平性)
We fact-check claims using the same standard for every fact check. We do not concentrate our fact-checking on any one side. We follow the same process for every fact check and let the evidence dictate our conclusions. We do not advocate or take policy positions on the issues we fact-check.
私たち(ファクトチェッカー)は、全てファクトチェックにおいて同じ基準を用いて言説のファクトチェックを行います。一方のサイドに偏ったファクトチェックはしません。全てのファクトチェックのために同じ手続に従い、証拠をもって結論を語らせるようにします。私たちは、ファクトチェックする問題について、唱道したり、政治的立場をとったりすることはしません。
(2) A COMMITMENT TO TRANSPARENCY OF SOURCES(情報源の透明性)
We want our readers to be able to verify our findings themselves. We provide all sources in enough detail that readers can replicate our work, except in cases where a source’s personal security could be compromised. In such cases, we provide as much detail as possible.
私たちは、読者に私たちの調査結果自体を検証してもらいたいと考えています。読者が私たちの調査をたどれるよう詳細に全ての情報源を提供します。ただし、情報源の個人的な安全が損なわれる場合を除きます。そのような場合でも、可能な限り詳細な情報を提供します。
(3) A COMMITMENT TO TRANSPARENCY OF FUNDING & ORGANIZATION(財源・組織の透明性)
We are transparent about our funding sources. If we accept funding from other organizations, we ensure that funders have no influence over the conclusions we reach in our reports. We detail the professional background of all key figures in our organization and explain our organizational structure and legal status. We clearly indicate a way for readers to communicate with us.
私たちは、財源について透明性をもちます。他の組織から資金を受け入れても、資金拠出者は私たちの調査で達した結論に対して全く影響を与えないことを確約します。私たちの組織における全ての重要人物の職業的背景を詳しく説明し、組織の構造や法的地位についても説明します。読者が私たちと連絡をとる方法についてもきちんと示します。
(4) A COMMITMENT TO TRANSPARENCY OF METHODOLOGY(方法論の透明性)
We explain the methodology we use to select, research, write, edit, publish and correct our fact checks. We encourage readers to send us claims to fact-check and are transparent on why and how we fact-check.
私たちは、自分たちが用いている選択、調査、執筆、編集、公表、そして自らのファクトチェックの訂正についての方法を説明します。私たちは、読者にファクトチェックすべき言説を提供するよう奨励し、私たちがファクトチェックをする理由や方法について透明性をもちます。
(5) A COMMITMENT TO OPEN AND HONEST CORRECTIONS(明確で誠実な訂正)
We publish our corrections policy and follow it scrupulously. We correct clearly and transparently in line with our corrections policy, seeking so far as possible to ensure that readers see the corrected version.
私たちは、自らの訂正方針を公表し、厳格に従います。その方針に従って、読者に訂正記事を明確かつ透明性をもって表示されるように、訂正を行います。