[コラム] 2018年 新聞は報じるニュースの根拠を明確にせよ

2018. 01. 15

立岩陽一郎理事が、ニュース報道における情報源の明示をテーマに、Yahoo!ニュース個人に寄稿しました。ぜひご一読ください。なお、立岩理事は2月3日のシンポジウムに登壇予定です。
 
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2018年、新聞は報じるニュースの根拠を明確にせよ

(FIJ・立岩陽一郎理事)
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 「私が思うに、年明け早々にトランプ政権は限定的な攻撃を仕掛けるでしょうね」

 

 年の瀬のテレビ局での収録での出来事だ。休憩時間に、売れっ子の歴史研究者が熱弁をふるっている。トランプ政権が年明け早々に北朝鮮に対して先制攻撃を行うという自説だ。

 

 「タテイワさんはどう思いますか?」

 

 いきなりふられたが、議論に加わる気にはなれず「どうですかねぇ」と言っただけでその場を流した。

 

 実は、この話は年末の日本のマスメディアに流れていた。いくつかの大手新聞、テレビ各社はその為の体制もとったという。

 

 情報を持ち込んだのは何れも各社の政治部だ。政治部とは、官邸や外務省、与野党の政治家を取材している記者たちだ。米政権の動きなのになぜ政治部なのか?答えは簡単だ。日本政府がそうした情報を流しているからだ。
政府にどれだけの情報が有るのかは不明だ。しかし少なくとも、平昌オリンピックまでの期間に米軍が北朝鮮を先制攻撃する様な状況にはないと言って間違いではないだろう。その後はわからないが、オリンピック後は既に「年明け」ではない。つまり、情報は正しいものではなかった可能性が極めて高い。

 

 2017年はこうしたあやふやな情報に翻弄された1年だったように思う。特に、米朝関係、日朝関係など、北朝鮮が絡んだニュースは、残念ながら根拠の乏しい情報が氾濫した。そして、現状を考えると、その状況は2018年になっても変わらない様だ。 (続きは…Yahoo!ニュース個人で)


 
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立岩陽一郎理事の略歴

(たていわ・よういちろう)  1967年生まれ。「ニュースのタネ」編集長。一橋大学卒業、放送大学大学院修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクとして調査報道に従事。アメリカン大学客員研究員。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後、2016年12月にNHKを退職。Yahoo!ニュース個人オーサー。