記事の事実関係について

2018. 12. 17

(2017年7月マドリッドで開催されたIFCN国際会議)

 

 12月8日付琉球新報に「<メディア時評・ファクトチェックの意義>報道変える起爆剤 選挙の「公平縛り」脱却」と題する記事が掲載され、一部に誤解を与える記述がありました。ファクトチェックやFIJの活動について正確にご理解いただくために、事実関係をご説明します。琉球新報社と執筆者の山田健太・専修大学教授には同趣旨の申し入れを行いました。

 

事実関係について

(1) 本件記事には、「そうした中で9月に実施された沖縄県知事選では、新たな動きが見られた。日本初のファクトチェックの実施である」「ただし、両紙の違いよりむしろ重要なのが、なぜ日本で初めて選挙期間中のファクトチェックが実施できたのかだ」との記載があります。
 しかし、沖縄県知事選が、日本で選挙期間中のファクトチェックが行われた最初のケースというわけではありません。昨年の総選挙(10月10日公示、22日投開票)で、FIJの呼びかけで複数のメディア参加型のファクトチェック・プロジェクトが行われました。BuzzFeed Japanなど4つのメディアがファクトチェック記事を発表しています(メディア掲載情報)。
 本件記事の趣旨を「日本の新聞として初めて選挙期間中のファクトチェックをした事例」と限定的に解釈したとしても、昨年の総選挙期間中に、朝日新聞が5本のファクトチェック記事を発表しています(東京本社版。衆議院解散後、公示前に発表されたものを含めると計9本)。
 欧米のメディアが選挙期間中に行っているファクトチェックは、主に候補者や政治家などの公的な言説を取り上げています。したがって、朝日新聞のファクトチェック記事が「日本の新聞業界で初めて、選挙期間中のファクトチェックをした事例」となります。
 
(2) 本件記事には、「その違いは、両紙の社風とも言えるし、協力先の差でもあろう。ファクトチェック・イニシアチブ=FIJ(新報)と藤代裕之研究室+国際ファクトチェック・ネットワーク(タイムス)の、判断基準や考え方が影響したということだ」との記載があります。
 この記載ですと、FIJが国際ファクトチェック・ネットワーク(International Fact-Checking Network, IFCN)と判断基準や考え方が異なるかのような誤解を与えかねません。FIJは発足当初からIFCNの活動に参加し、その考え方に則ったファクトチェック活動を推進してきました
 具体的な事実関係は、以下のとおりです。
① FIJは2017年6月発足後、発起人2名がIFCN主催の国際会議(7月5日〜、マドリッド)に参加し、帰国後に報告会セミナーを開催しました。今年のIFCN国際会議(6月20日〜、ローマ)にもFIJの理事2名が参加し、報告会セミナーを開催しています。なお、昨年と今年のIFCNの会議に参加した日本側メンバーは、(取材記者を除き)FIJ関係者のみでした。
② FIJは2017年9月にIFCNの原則を踏まえたガイドラインを策定し、総選挙のファクトチェック・プロジェクトを実施しました沖縄県知事選のプロジェクトも、IFCNの原則を踏まえた新ガイドラインを整備したうえで実施しました。